【もうすぐお盆、ひいおばあちゃん、一周忌】
私の祖母が去年の夏、93歳で亡くなってから1年。
最後に会った日のビデオを、今になってはじめてちゃんと見返した。
その日おばあちゃんはいつもと変わらず元気で、
娘(当時小5)が、戦後70年でひいおばあちゃんにその頃のことを聞いて、夏休みの宿題にする、
ということでビデオを2時間ほど録画しながら話をしていたのだった。
一緒にお茶を飲みながら、いろんな話をしてくれた。
尋常小学校を出たあとは、家で農作業を手伝いながら和裁を習ったりしていた。
蚕を飼って、育てていた。年に3〜4回は繭にするのにひっきりなしに桑を取ってきて忙しかった。
戦時中は、伊勢崎のネジ工場に動員された。1mmでも違うと使いものにならないから、気をつかった。
戦後、おじいちゃんと結婚した。おじいちゃんは戦時中水兵だったが帰ってきて、縁があった。
土地をもらって、イチゴ(農家)をやろうとしたりしたがうまくいかなかった。
おじいちゃんはこれからは電気の時代と電気屋に働きに出た。
その後工務店をはじめて忙しかった。
・・・昔の話が昨日のことのようにポンポン出てくる。
「おばあちゃんなー小学校出て上の学校へ行きてーだなんて思ったってもりっこ(妹の子守)なんかして、
でも行けるっていう○○んちの△△(男の子)なんかかえって『行きたくねえー勉強なんかやだー』なんて言ってたなー」
なんて話とか。
それから2日後(…たった2日後、の朝…なのでした)
「おばあちゃんが亡くなった」
と父から電話があった。
信じられない話だったけど、くも膜下出血で、運ばれる救急車の中ですーっと意識を失ったのだそうだ。
けれど「頭が痛い」と近所に住む父に電話をしたあと、シャワーに入って身支度をして、お財布を探して、
さあ、という感じで救急車に乗ったんだよ、と聞いて、おばあちゃんらしいなあーとなんだか笑ってしまった。
さいごまで、ちょこちょこ動いて元気なままあっちの世に行っちゃった。
そういえば、という感じで父があとから
昔の話をいろいろしてたろう?それで、おばあちゃんが言い忘れたからあとで伝えてくれ、と
<おばあちゃんな(年のはなれた)いちばん上のあんちゃん(お兄ちゃん)が
戦争でとられてその間女ばっかし(母と姉と妹)で農家の家のことやってて、とうちゃんもいねえし
男手がねえってのはほんとに大変だったんだよ>
・・・おばあちゃんは、孫や子に言うだけ言ったから、あの世へ行ってしまったんだろうか、
どこも悪いところがなくて、100まで生きるだろう、とみんなで言っていたのに。
私はビデオをまわしたせいじゃないか、という罪悪感みたいなものを感じていた。
録画は見返すこともなく、娘は聞いた話を思い出すかぎり作文にまとめ、おばあちゃんは亡くなった、と書き添えて
夏の終わりに提出した。


のだけど、1年近く経ってお盆が近づき、ビデオを見ようかという気持ちになった。
それで、気がついた。
おばあちゃんと一緒に映っている3人の我が子たちが、それぞれに少しずつ幼い。
おばあちゃん、ひ孫は、1年分成長したよ
顔つきが大人びた、体つきもかわった、経験したこと、できるようになったこと、
1年を振り返ったらいくつもいくつもある。
その分、おばあちゃんはそこで命を終わりにしたんだ、とすとんと思えた。
おばあちゃんはいつもにぎやかで、なんだかおっちょこちょいで、シワシワだけどかわいらしくて
いつもやさしくしてくれた。
いつか私もそんなおばあちゃんになってひ孫と話ができるような未来をつくる、
今の毎日を暮らしていきたい。
ビデオはDVDに焼いて、家のリビングのテレビに映し出したら
いちども我が家に来たことのないおばあちゃんが、はじめて訪ねて来てくれたような気がした。



※昭和22年か?おじいちゃん、顔長い(笑)!おばあちゃんは、丸顔だ。さとかに似てると私は思う。