磁力と引力

<科学をやる>のは、科学を身につけようとかそういうことのためだけではなくてそれ以上に、
「言葉を獲得し、みがくため」と思う。
目の前で起こっていることに感動し、
それに言葉をあてはめて表現するということは、
芸術だ。



就学前の子が、
さ鉄を紙皿にまいて、磁力線を浮き上がらせる実験で、
磁石が3本くっつくと、真ん中の磁石の磁力が失われるのを見て
「真ん中のじしゃくは、となりのじしゃくに力をかしてあげたんだねー」
と発言した。
なんと素直な言葉だろう。
ふだんの自分の生活から、擬人化した表現が出てきたのだろうけれども、
美しいひとつの詩だなあ、と思う。



磁石のS極とN極が引きつけあう様子や、
逆に同極同士で反発しあう様子を見ると、
人も同じだなー、と思ってしまう。
すーっ、と引かれるように惹かれてしまう人もいれば、
そばを通るだけでぽーんと跳ねたくなるような、しりぞけあいたくなる人。
そこには<科学的理由>もあるのかもしれないが、
まずはその現象は事実で、
そこをおもしろいと思う感性が表現を生む。


宇宙の引力を私たちの孤独とあらわした詩は有名すぎるけど、
折りにふれて私はその詩を思い出す。
合唱曲にもなっているようで、先日息子(中1)が口ずさんでいた。
意味をわかって歌っているのかは不明(笑)だけれど、
いつか君にもよく考えざるを得ない日がくるのだろうか?